10巻の感想

※「安達としまむらアニメ円盤特典④」のネタバレもちょっとだけあります


読後一日ぼーーーーっとしてた気がする。あとがきで「あだしまは8巻で完結、あとは後日談」って書いてあるけど、そんなCパートみたいな軽さじゃない。最高。

入間人間先生は言葉に表しがたい心情を文字に出力して、読者に感覚的かつ的確にそれを受け取らせる技術がすんごい(言語化能力のバケモン)ので、読書中は情緒を振り回されて読了後は余韻がよいんよいんになる。アーすごかった。アニメ放映時「駄ポエム」って言ってた奴は小説を読んでないか感性が腐っています。天才的表現に気づきなさい。


発売日に買ったけど、少しの間だけ読めなかった。なぜなら、アニメ円盤特典の小説で初夜~最期までを知った後だから。

重い。

そんなこと言ってたら一生読めないので、意を決してとりあえず本を開いて、まず一章の『Fantasy Sister』。これ、別の短編で出てきた陶芸家じゃんか。 しまむらの周りは女女が多いな……。

読み始めればするするといけるもので、そのまま『Astray from the Sentiment』 『Be your self』

重~い。

安達家の話。全人類読んでくれ! 宇宙人(広義)も読め! たった1°のズレでも何十年積み重ねればとんでもない幅になってしまう。それが島村家との対比で描かれていて、安達家の空気感を際立たせる。

娘も母も、後ろ向きな迷いがつらい。迷った末の「さようなら」「じゃあね」って、結果として娘は幸せな人生を歩めたし、独り立ちもしたから子育てとしては成功。じゃあ親としては……?

大人安達がハチャメチャに美人であった。


安達母×しまむら母が好きです。安達母はしまむら母と、安達はもちろんしまむらと仲がいいというのも不思議な関係をしているな。親親コンビのやりとりはテンポがよく、少し気楽に読むことができる。それでも安達母の”ああ、なにか失敗したんだろうなぁって思った”の重みはすさまじいものがあった。

親はもちろん人生をかけて我が子を育てたわけで、二十数年も一緒だった子を送り出したときに「失敗した」と感じる切なさときたら、読み手としては相当なものだった。安達桜が家を出たら二度と帰ってこないし、関係を取り戻す希望すらなくなる。ここで終わり。本当に切ない……。

安達桜側の「今から取り戻そうと思えばできるかもしれないが、そんなところに時間も労力も使えない」という諦めに近い心情が虚しい関係性を際立たせる。母も子も"そのくらいの人"という認識。どこかズレたままここまで来てしまったという哀しさ、どうしようもなさの章でした。


『The Sakura's Ark』『Cherry Blossoms for the Two of Us

重~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

アーーーー


過去の樽見回を見返すのに心構えがいるようになってしまった。



いつか来るとは思ってたけど、そうなんだけど。それにしてもしんどい。樽見もそうだったか。まあそうよな。絶対に幸せになってほしい。だーーーーーーーーーーーれも悪くないんだ、ここまでくると。友人としての樽見であれば、ある程度安達の独占欲の強さとの付き合いについて、しまむらが考え直す余地もできようが、なんというか、こうなってしまうと、本当に報われない恋だったし、樽見が本当に本当に本当に”良い奴”なのがどうしようもなく哀しい。

無理。


むり~~~~~~~~!!!!

家に帰ってからどれほど泣いたんだろうか。しまむら視点から見てもあんなに健気に頑張ってたのに。ぎこちない距離感を必死に埋めようとして、何度も誘って、一度はもしかして、と思って……。


『The Sakura's Ark』の雰囲気の生々しさは、最高潮のシーンだけでなく、別れまでが描かれているところにあるんじゃないかと思う。しまむらに着せた防寒具を受け取るときの樽見の気持ちなんて、もはや察するに余りある。

頑張って頑張って頑張って与えてきた気持ちを、最後に「受け取れない」と一個一個返されていく暗喩でもあった気がする。



「双方がなすすべなく関係が終わる」ということの残酷さ、やるせなさを丁寧~~~~~に描いてある。

なにが「女子高生ふたりのゆる~い日常」だ。そんなわけがあるか。



樽見しまむら安達としまむらの対比は以前にもあったけど、今回のそれは以前に増して含むものが多い。



お揃いだったマスコットだけは引越し後も大切に飾ってあるあの描写が、さりげないながらもかなり響いた。最初の淡白だったしまむらからは考えられないほど様々な葛藤、苦悩を抱えている。安達がそうさせたんだよな、すごいな安達……。



しまむら、安達のことめちゃめちゃ好きじゃん。大好きじゃん。




救い、救いか……。樽見の死をしまむらが知ってたこと(円盤特典4巻)から、関係が完全に切れたわけではなったことが分かる、というところ?

呪いでは………? 

該当部分を探そうと思って特典小説を読んだらガチ泣きしそうになり、あわてて閉じた。”最期”という文字で顔を覆ってしまう。まだ読み返せない。


ほかにも日野と永藤、あだしま同棲開始激甘イチャラブなど書くとこはたくさんあったのですが、樽見しまむらのことでいっぱいになってしまったのでここで締めます。しまむらの成長とか、変化とかももちろんあったのでちゃんと書きたくもあるな。読み返して追記するかも。

「この二人である必然性」を徹底的に深掘りしてるからこそのマジでしんどいシーンがきちゃった。砂糖と血を交互に吐きながら読んだ10巻であった……。

”遠くに、一緒に行ってみたかったな”


これ自由律俳句として後世に残せませんか? 安達としまむらがサンフランシスコに行くという文脈ありきで読むとしんどさ2倍!